1)消化管疾患
内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)
高精度の機器と確実な技術、快適な検査空間
2019年秋に新しく稼働を始めた内視鏡室は、みなさんにできるだけ快適に検査を受けていただけることを第一に考えた設計になっております。検査の際は高精度の内視鏡機器(OLYMPUS EVIS LUCERA ELITE、FUJIFILM LASEREO)を駆使し、丁寧な観察、確実な技術により正確な診断を行います。基本的に鎮静剤を少量使用することで、苦痛の少ない検査を心がけています。また、知識と経験豊富な看護師が検査開始から終了まで患者様に寄り添った看護を行います。内視鏡に苦手意識をお持ちの方も是非ご相談ください。神戸市胃がん検診(胃内視鏡検診)にも対応しております。
なお、当院では内視鏡学会の指針に従い、十分な感染対策を講じたうえで内視鏡検査や治療を行っており、対策の一環として患者様にも検温や問診などにご協力いただいております。
大腸ポリープ
日帰り、または入院によるポリープ切除
大腸ポリープには様々な種類や大きさのものがあります。経過観察とするか切除するか、切除するのであれば日帰りか入院か、患者様のご病状(ご年齢や治療中のご病気、内服薬の種類など)やポリープの種類、大きさによって、対応を一緒に考えて参ります。
食道がん、胃がん、大腸がん、咽頭がん
ハイクオリティな内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による早期がんの一括切除
画像強調拡大内視鏡(NBI、BLI)や超音波内視鏡(EUS)を用いて、がんの早期発見と確かな質的診断を行います。早期がんに対しては、それぞれの患者様にあわせて内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による最適な治療を提供いたします。胃、食道だけでなく大腸に対しても安全確実なESDを施行することが可能です。
クリニックの先生方からのご紹介だけでなく、他院において技術的に切除困難と判断された症例でも、治療適応をよく見極めたうえで積極的にESDを施行し、良好な成績を得ております。
内視鏡治療の適応とならないがん(進行がん、一部の早期がん)に関しては、外科、腫瘍血液内科と綿密な連携のもとに適切な治療方針を考案します。
また、咽頭(のど)の表在がんに関しても、当院で対応可能なものに対しては耳鼻咽喉科の先生方と協力してESDによる切除を行っており、非常に良好な治療成績を得ています。病変によっては神戸大学病院 耳鼻咽喉科にご紹介いたします。
「咽頭(のど)、食道がんの早期発見と内視鏡治療について」の掲載ページはこちら
近年の消化管内視鏡治療件数の推移
消化管出血(胃十二指腸潰瘍や食道胃静脈瘤破裂、大腸憩室出血、腫瘍出血など)
24時間365日、緊急内視鏡に対応
消化管の病気による出血は、吐血や下血、血便などの症状となって現れ、病状によっては緊急内視鏡および内視鏡的止血術が必要となります。当院では緊急内視鏡を含めた救急診療を常時行っています。夜間もオンコール体制を整えており、24時間365日患者様の受け入れが可能です。
当院にはIVR(カテーテルによる血管塞栓術)を得意とする放射線科医も勤務しており、内視鏡的止血が困難な場合はIVRセンターで治療を行うことも可能な体制になっています。
食道運動障害(アカラシアなど)
経口内視鏡的筋層切開術(POEM)を関西で2番目に導入
2017年9月より、アカラシアなどの食道運動障害に対するPOEMを関西で2番目に導入いたしました。神戸大学、昭和大学で術者として十分な経験を積んだ内視鏡医がPOEMを施行しており、良好な治療成績を保ち患者様に大変満足いただいております。神戸大学病院と連携し、厳密な診断のうえ治療に取り組んでいます。
粘膜下腫瘍
超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)や粘膜切開生検による確実な診断と腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)などの低侵襲治療
粘膜下腫瘍は小さければ経過観察が可能ですが、大きくなると良性か悪性かの判断が重要となり、もし悪性(GIST)であれば手術が必要となります。従来生検では診断が困難でしたが、当科ではEUS-FNAや粘膜切開生検(臨床研究として実施)により確実に診断することが可能です。手術の際には外科と協力し、腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)など、患者様の身体的負担を最小限に抑えた治療を提供しています。
経口内視鏡的腫瘍核出術(POET)について
POETとは、食道や食道胃接合部、胃噴門部の粘膜下腫瘍を摘出する新しい低侵襲な内視鏡手術です。
食道の粘膜下腫瘍の多くは良性であり経過観察が基本ですが、サイズが大きいものは食物の通過障害をきたすため切除対象となります。
当院ではLECS、POET、あるいはその他の術式、いずれが適切か、内科外科で十分に協議したうえで最適な治療法を選択するようにしています。
潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)
患者さん一人ひとりに寄り添い、かつ十分な科学的根拠を持った治療
IBDは慢性的な下痢、血便や腹痛をきたす腸の病気で、近年増加傾向にあります。長期的にコントロールしていくことが重要な疾患になります。当院では日常生活にも配慮し患者さん1人1人に寄り添った適切な治療(栄養療法、5-ASA製剤、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤、白血球除去療法など)を提案できるよう努めています。
消化管悪性リンパ腫
血液腫瘍内科と協力し、最適な治療方針を検討
悪性リンパ腫は血液中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍です。リンパ節に発生することが多いのですが、その次に消化管に多く発生することが知られており、しばしば胃や腸の腫瘍として発見されます。当院は治療方針の決定に必要な小腸カプセル内視鏡、PET/CTなどの機器を備えており、血液内科の専門医と協力して最適な治療方針を提案することが可能です。
小腸疾患
カプセル内視鏡ならびにダブルバルーン内視鏡による小腸病変の精密な診断
従来、消化管の中でも小腸はあまり病気のできない臓器として認識されてきました。また、通常の上部・下部消化管内視鏡では観察を行うことができませんでした。しかし、近年高齢化による疾病構造の変化やIBD患者の増加に伴い、小腸病変(腫瘍、粘膜障害に伴う出血、炎症、など)が多く報告されるようになりました。
カプセル内視鏡は、その名の通りカプセル型の内視鏡を水と一緒に飲みこみ小腸を撮影するものであり、ダブルバルーン内視鏡は内視鏡先端とオーバーチューブ先端にバルーンを取り付けた特殊な内視鏡で小腸を観察、場合によっては治療も行うことが可能な機器です。病状によって使い分けが必要ですが、いずれも小腸病変の検査や治療には必須の機器であり、当院でも2019年秋より導入いたしました。近隣には小腸検査のできる施設はまだほとんどありません。
経口摂取困難
状況に応じてPEG・PTEGなどを検討
何らかの理由で患者様が口から食事を摂取できなくなった場合、ご容態やご希望に沿って適応があれば内視鏡的な胃瘻の造設(PEG)を検討いたします。胃切除後の方や解剖学的な胃の位置、様々な条件により胃瘻を造設できない場合、経皮経食道胃管挿入術(PTEG)を行うことも可能です。PTEGは栄養以外にがんによる腹膜炎で腸閉塞をきたした方の減圧に有用な場合もあります。
2)胆膵疾患
胆膵グループの特徴
高い専門性とチーム医療
当院では胆石症や総胆管結石、慢性膵炎などの良性疾患から膵臓がん、胆管がん、胆嚢がんを代表とする悪性疾患まで幅広い疾患に対して、胆膵領域を専門とする内科医、外科医が密に連携することにより診断から治療まで一貫した診療を提供することが可能です。
近年の胆膵内視鏡検査・治療件数の推移
胆嚢結石症、総胆管結石症による急性胆嚢炎、急性胆管炎
胆嚢ドレナージや内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP)など、最適な治療方針の考案
胆嚢結石や総胆管結石が引き起こす急性胆嚢炎、急性胆管炎などの疾患は、ときに激烈な腹痛や重症の細菌感染症をきたすため、迅速かつ正確な診断、治療が必要となります。当院では消化器内科・外科で1つのチームとして、ガイドラインを基にそれぞれの患者さんに最適な治療を考案するよう心掛けています。急性胆嚢炎に対する経皮的ドレナージ術や外科と連携した胆嚢摘出術、急性胆管炎に対する内視鏡的ドレナージ(ERCP)にも常時対応できる体制を整えており、安全確実な治療を行います。
膵臓がん
超音波内視鏡検査(EUS)ならびに穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)による膵臓がんの早期診断
膵臓がんは年々増加傾向にある難治性のがんとして注目を集めていますが、治療が難しい原因の一つとして、早期の段階では特異的な症状がなく、進行がんの状態で発見されることが多いことが挙げられます。その一方でStageⅠの早期膵がんは治療により高い5年生存率(50%程度)を得られることが報告されています。このような背景から、膵臓がんの予後の改善させるためには早期診断が最も重要な要素とされています。これらの問題を改善するため、当院では2017年4月より超音波内視鏡検査(EUS)を導入しました。EUSは現在普及しているCT検査やMRI検査などと比較し空間分解能に優れており、今まで発見することが難しかった、より小さながんを早期の段階で発見することが可能となりました。特に、予後の悪い膵臓がんに対してはEUSでの早期発見に加え、超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)を行っています。EUS-FNAは前述したEUSを使用し腫瘤に対して直接針を刺して検体を採取する方法で、小さな腫瘍からも検体を採取し、術前の病理診断を行うことができます。まだ施行可能な施設は少ない検査ですが既報では90%近い診断率が報告されており、当院でも2017年4月に導入してから高い診断率を得ています。
胆管がん、胆嚢がん
EUS、ERCPを駆使した正確な評価のうえで外科手術適応を検討
胆管がん、胆嚢がんは肝臓で産生された胆汁という消化液の通り道である胆管や一時的に胆汁をためておく役割を担う胆嚢にできるがんのことを指します。胆嚢や胆管の周囲には様々な血管や臓器が密集しており、正確な治療を行うにあたってがんの進展範囲の正確な診断が必要不可欠とされています。当院では前述したEUSに加え、ERCP下での管腔内超音波検査法(IDUS)などの高度な内視鏡検査も積極的に取り組んでおり、正確な診断、治療が行えるよう努めております。
膵臓がんや胆管がんなどの悪性腫瘍による胆道閉塞
負担の少ない超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(EUS-BD)
膵臓がんや胆管がんなどの悪性腫瘍による胆道閉塞に対して現在は内視鏡的逆行性胆膵管造影法(ERCP)を利用したドレナージを行うことが一般的ですが、内視鏡的なドレナージが不成功に終わった場合、次の手段としてお腹の外側から皮膚を通して肝臓にチューブを入れる経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)が行われています。PTCDは、体の外側にチューブが出た状態になってしまうため患者様の生活の質(QOL)を著しく低下させてしまいます。この問題を解消すべく、当院では前述したEUSを使用し、胃や十二指腸から胆管に直接ステントを留置する超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(EUS-BD)にも対応しています。非常に新しい手技でまだ導入している施設はほとんどありませんが、当院は神戸大学医学部附属病院の消化器内科と連携してEUSの経験が豊富なスタッフの元、同処置を行っております。EUS-BDの一番の利点はチューブが体表から出ないため患者様のQOLを損ねないことにあります。胆管狭窄の症状にお困りでPTCDに対して抵抗がある患者様がいらっしゃいましたらいつでもご相談ください。
3)肝臓疾患
肝臓は症状があまり現れないため、“沈黙の臓器“とも呼ばれますが、生命維持には不可欠な臓器です。いかにいたわりながら、ご自身の肝臓と付き合っていくかが大切です。当院には肝臓専門医(内科・外科ともに)が多数在籍していますので、分からないことは何でもご相談ください。
慢性肝疾患(ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、自己免疫性肝炎など)
まずは適切な病状評価が重要
慢性肝炎は、様々な原因によっておこる病態ですが、いずれも放置すると徐々に肝臓のダメージが蓄積し、線維化を伴って肝硬変になっていきます。肝硬変になると腹水、食道胃静脈瘤破裂による吐下血、肝性脳症など、様々な不調をきたし、また肝細胞がんも合併しやすくなります。従いまして、適切な時期に医療機関を受診し、適切な病状評価と経過観察を受けていただくことが必要です。
甲南医療センターは「肝疾患専門医療機関」に選定されています。詳しくはこちらをご覧ください
C型慢性肝炎/肝硬変
新規経口抗ウイルス薬(直接作用型抗ウイルス薬;DAA)による根治を目指した治療
ウイルス性肝炎、特にC型肝炎に対してはDAAの登場により、治療に伴う副作用の心配が少なくなり、2~3ヶ月間の内服薬のみでウイルス学的著効(SVR)を達成することが可能な時代となっています。これにより肝臓の機能を維持し、繊維化の進行を食い止めることで肝硬変への進展を抑制することができます。DAAの治療適応や、治療後の経過観察についてもお気軽にお尋ねください。
B型慢性肝炎/肝硬変
正確な病状の把握と治療方針の判断を
一方、日本人の4人に1人はB型肝炎ウイルスの既往感染者といわれています。急性肝炎はもちろん慢性化するとC型肝炎と同様に肝硬変に進展してしまいます。現在では核酸アナログ製剤にてウイルスの増殖を抑えることは可能となっていますが、その治療適応には正確な病状把握が大切です。当院では、兵庫県肝炎コーディネーターを複数名設置し、肝疾患専門医療機関として、しっかりと患者さんをサポートしていく体制を整えています。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
適切な生活指導と、一緒に歩む定期健診
近年増加傾向にある、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)はメタボリックシンドロームとの関わりが強い疾患です。肝臓に脂肪がたまり炎症がおきて線維化がすすみます。当院では糖尿病総合内科の医師や、また栄養士と連携し、独自の生活指導、定期的な検査を考案しております。診断に必要な肝生検も積極的に行っております。生活習慣病をお持ちで脂肪肝といわれた方は一度ご相談ください。
肝細胞がん
最新のエビデンスに基づいたチーム医療
近年、肝細胞がんに対する治療は、手術、肝動脈化学塞栓術(TACE)、経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)を3本柱としつつ、病状によっては全身化学療法を組み合わせた複合的な治療へと進歩しています。当院では複数の肝臓学会専門医が最新のエビデンスに基づいて治療方針を検討し、消化器病センター内(外科、放射線科、腫瘍内科との合同カンファレンス)で連携を密にとり、患者さん1人1人の病状に応じた治療を選択し、提供できる環境が整っています。