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1)虚血性心疾患(急性心筋梗塞・狭心症)
スクリーニングとしての負荷心筋シンチグラフィ、心臓CT検査、運動負荷心電図検査を実施し疑わしい場合、入院の上カテーテルでの冠動脈造影検査(CAG)を行います。冠動脈造影検査に際しては必要に応じて冠動脈血流比(FFR)測定も行い、狭窄病変による血流障害の程度を計測しカテーテル治療(PCI)が必要かの評価を行います。そしてカテーテル治療に際しては血管内超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)を用いて血管の状態を詳細に評価しながらより確実で安全な治療を行っております。
糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙歴などのリスク因子のある患者さんはご相談ください。特に急性心筋梗塞は一刻をあらそう重篤な疾患であり365日24時間の救急受け入れが可能な体制を整えています。緊急カテコールでスタッフが集合し90分以内のDoor to Balloon timeを目指しています。
当院でのカテーテルでの冠動脈造影検査、冠動脈形成術(ステント治療)を行う際は基本的には橈骨動脈と呼ばれる手首にある血管からカテーテルを入れることが主となっています。手技によっては大腿動脈という足の付け根の太い動脈を用いることもありますが、現在はカテーテルやステントなどのシステムの性能、安定性が向上しほとんどの症例では橈骨動脈からのアプローチが可能となっております。患者さんにより負担の少ない医療、安全な医療を目指しています。
2)末梢動脈疾患
末梢動脈疾患(PAD)とは、動脈硬化を原因として主に足の動脈に狭窄または閉塞をきたす疾患のことです。足の動脈の血流障害(虚血)のため、歩くと足が痛くなる等の跛行症状が認められます。重症化すれば足が壊死してしまい、下肢切断を必要とする場合もあります。PADの患者さんは虚血性心疾患、脳血管障害を合併していることが多く、生命予後は不良です。当科ではPADの患者さんに対して積極的にカテーテルによる血管内治療を行っています。最近では下肢動脈ステントだけではなく、薬剤溶出性バルーンを用いたカテーテル治療も行っています。下肢切断を必要とする場合には形成外科とも連携をとりながら治療を行っています。また足の動脈だけではなく、虚血性心疾患、脳血管の精査も行い、包括的なチーム医療を実践しています。
3)不整脈
徐脈性不整脈(洞不全症候群、房室ブロック)で症状のある患者さんに対しては恒久的ペースメーカー植え込み術を勧めております。頻脈性不整脈(心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍など)や期外収縮に対してガイドライン従いカテーテルアブレーションを積極的に行っています。特に症候性心房細動に対しては第一選択の治療法と考えています。
3Dマッピングを用いた肺静脈隔離術
4-1)心不全
高齢者の増加、それに伴う高血圧、弁膜症、心房細動に罹患する患者数の増加にともない心不全患者は爆発的に増加してきています。医療機関のみならず地域全体としてさまざまな職種が連携して心不全の発症や重症化を防ぐ体制作りが急がれています。甲南医療センターは地域の中心となる急性期病院として積極的に心不全患者を受け入れてゆきます。そして多職種とのチーム医療で心臓リハビリテーションも早期から介入し、心不全患者の再入院を予防し質の高い生活を行っていただけるよう教育・生活指導・カウンセリングも行います。退院後も心不全患者では日常生活における綿密な管理が必要になるため、地域の医療機関や訪問看護ステーションとの連携を行いながらサポートさせていただきます。
神戸心不全ネットワーク(KHFN)
“心不全患者さんを地域全体で診療する”ことを目標に、急性期病院と療養型病院、診療所、そして在宅訪問医療まで、地域の医療機関が一体となった”心不全に対する地域包括ケア”を目指し神戸心不全ネットワーク(KHFN)が立ち上がりました。甲南医療センターも連携医療機関として東神戸の心不全治療の中心として積極的に活動してゆきます。
4-2)心不全の早期スクリーニング(心臓検診)に関して
心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です(日本循環器学会ガイドライン)。心不全を一度でも発症すると、皆様の大切な日常生活に支障が出るだけでなく、心不全入院や心臓突然死を来たし、予後(寿命)にも影響が出てきます。実際に、心不全を発症した患者さんの予後は、悪性腫瘍(胃がん)の予後と同等もしくはそれ以上に悪いという報告があります。このように、心不全は一度発症すると大変厄介な病気です。では、心不全を発症しないためには、どうすれば良いでしょうか?これには、“早期発見、早期介入”が重要です。
実は、心不全にも悪性腫瘍と同じくステージ分類があり、心臓のステージは高血圧や糖尿病、肥満、喫煙などの生活習慣病やその他の要因などにより、徐々に進展していきます(急性心筋梗塞や急性心筋炎などの特殊な病態を除きます)。そのため早期発見、早期介入をすることで、心不全の発症を抑えることが出来ます。ただ、心不全を発症する前段階(前心不全といいます)では、心不全症状(息切れやむくみなど)がないため、自分で気づくことは出来ません。ただ怖いことに、前心不全でも心臓はある程度痛んでいます。
そのため、まず重要なことは、血液検査や心エコー検査などであなたの現在の心臓の機能を正確に評価することです。そこから適切な介入(心不全の発症予防)がスタートします。当院循環器内科では、心臓の機能をより正確に評価するため、最新の心エコー機器を取り揃えています。
検査後には、今のあなたの心臓の機能はどの程度なのか、そして今後どうすれば元気で長生きが出来るのか、を医師と相談する外来を設けています。我々はこのような取り組みにより、将来心不全で苦しむ患者様が1人でも減ることを心から祈っています。
*これは“心臓の一生”を示した図です。今のあなたの立ち位置はどこでしょうか(緑星?黄星?赤星?)?
甲南医療センター循環器内科では、最新の心エコー機器を用いて、心臓の状態を詳しく検査し、皆様が元気で長生き出来るよう相談できる外来を設けています。
上記記事「心不全の早期スクリーニング(心臓検診)に関して」のPDF版はこちらになります
開業医の先生方へ
ご紹介シート(High-risk stageB心不全患者screening目的)
※対象:前心不全状態で、比較的お元気な患者様(臨床虚弱尺度1から4まで)
5)静脈血栓症(肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症)
深部静脈血栓症とは静脈内に血の塊(血栓)が生じる状態で、下肢の静脈に外傷や長時間足を動かさないことで起こることが多く、片足が腫れ痛みが現れます。血栓が大きくなり下肢の静脈から心臓、肺に流され肺の血管を閉塞させた場合は肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)とよばれ呼吸困難、胸痛をきたし重症な場合は命を落とすこともある疾患です。
足のむくみ、腫れ、痛みに気付いたときや今までにない歩行時や階段での息切れ、胸や背中の痛み、動悸などを感じたときはご相談ください。静脈血栓症の疑いがある場合は超音波検査やCT検査を実施し診断をつけます。血液をサラサラにする抗凝固療法で血栓を溶かすことが治療の主体となり重症度に応じて外来・入院での治療を行っています。
6)睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)とは睡眠中に息が止まる(無呼吸)、もしくは息が浅くなり(低呼吸)低酸素血症になる病気です。日本国内で推定患者数は300万人と言われています。この病気は2003年6月に新幹線の運転手が居眠り運転をしたことが判明しマスコミに取り上げられたことがきっかけで知られるようになりました。この運転手が高度の肥満があったことから肥満の中年男性に多い病気であるとの認識が広まりましたが決してそうではありません。若年者から高齢者にわたりまた肥満のない人にもいらっしゃいます。男性に多い病気ですが女性にもあります。症状は昼間の耐え難い眠気、会議中に、居眠りをすることが多いことですが、熟睡できない、奥さんから鼾(いびき)をよくかく、息が止まっていると言われる、夜に何回もトイレに行く、朝起きたときのどが渇くなどの症状を訴えられる患者さんもいらっしゃいます。また自覚症状がなく血圧が高く降圧薬を飲んでもなかなか血圧が下がらない人や会社の健診で初めて指摘される方もいらっしゃいます。何年も頭痛に悩まされていたがその原因がSASであった患者さんもいらっしゃいます。睡眠の質が低下することで、意欲が低下しさらに気分の落ち込みを生じうつ病を発症される方もあります。この病気を診断され治療している患者さんは約35万人です。残りの大多数の方は無治療で生活されているのが現状です。
睡眠時無呼吸症候群の原因
この病気の原因は睡眠時に①上気道が閉塞する閉塞性睡眠時無呼吸症候群、②脳からの呼吸刺激が弱くなるために無呼吸になる中枢性無呼吸症候群、さらに③二つを併せ持つ混合型に分類されますが閉塞性睡眠時無呼吸症候群が最も多いとされています。日本人は軽度の肥満でもSASになりやすいとされています。その原因として肥満によるもので舌やのどの周りに脂肪が付着し気道を狭めてしまいます。また欧米人に比べ顎が小さく下顎が後退していることが原因であると言われています。若年者では肥大が気道狭窄の原因になることもあります。また加齢に伴い筋力が低下し特に上気道を拡張させる筋群の低下すると上気道がふさがれ睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。
睡眠時無呼吸症候群の症状
すでに述べたように症状は
1.昼間の眠気
2.熟睡間がない、不眠症がある
3.夜に何度もトイレに行く、朝起きるとのどが渇く
4.鼾をかく、息が止まっていると言われる
5.気分が落ち込む
6.朝頭痛がする
7.集中力がなくなった
以上のような症状もしくは指摘されればSASを疑って下さい。
鼾の原因は気道狭窄であるのでSASの発見のきっかけになります。この病気を放置すると心筋梗塞、脳卒中、心不全、導尿病の発症リスクが正常な人に比べて2.0-4.0倍になるとされています。決して見逃してばならない病気です。
睡眠時無呼吸症候群の診断
診断はPSG(Polysonography:ポリソノグラフィー)という検査をします。このPSGは2種類あり簡易型と精密型です。まず簡易型PSGを自宅で睡眠時に装着していただき大まかなSASの検査をします。この簡易型PSG検査は指に酸素濃度を測定するセンサーをつけていただき胸にももう一つセンサーを付けていただくだけの簡単な検査です。睡眠時の酸素濃度、無呼吸の低程度を計測します。いわばスクリーニング検査です。疑いがあれば病院に1泊していただき精密なPSG検査を行います。この時の入院は夜間の1泊入院となります。
睡眠時無呼吸症候群の治療
下記のような流れでSASを診断しますが中等度以上、AHI(無呼吸低呼吸指数)が簡易PSGで40回/時間以上、精密PSGで20回/時間以上の場合はCPAP(持続的陽圧喚起療法)の保険適応になり治療を開始します。いつまで続けるのか、治ることはあるのかとよく質問されますが基本的には生涯にわたり治療を継続する必要があります。ただ肥満、扁桃肥大が原因のSASの場合は減量したり、扁桃摘出した場合に改善することもあります。また軽症の場合は歯科でマウスピースを作成し夜間装着していただく場合もあります。月に一度SAS外来に通院していただきCPAPの装着がうまくいっているかチェックします。また生活指導も行っています。
7)心臓リハビリテーション
心臓リハビリテーションとは心筋梗塞、狭心症、心不全などで急性期治療を受けた患者さんが社会復帰し、再発を予防して、最終的に快適で良質な生活を目指すために、運動療法だけでなく食事療法・生活指導・カウンセリングなどを包括的に行うプログラムです。
医師、看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、栄養士、臨床心理士、ソーシャルワーカーでの多職種チームを組んで個々の患者さんに対応しています。