術前診察・評価
予定手術の場合、手術前日までに外来またはベッドサイドにて患者さんを診察します。全身状態や検査結果、予定術式(予定されている手術内容や方法)などをもとに個々の患者さんに合った麻酔方法を提案し、麻酔に伴うリスクと合わせて説明します。
麻酔方法は全身麻酔・硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔・末梢神経ブロックなどがありますが、中でも全身麻酔は当科で管理する麻酔方法で最も基本的なものです。全身麻酔は「鎮痛」「鎮静」「無動(筋弛緩)」を三要素として成立する麻酔方法で、手術中患者さんは意識がなく眠っており、痛みを感じることはなく、また動いてしまうこともありません。麻酔薬が全身に投与されるので、全身麻酔を受けることを躊躇される患者さんもいらっしゃいます。しかし、近年における知識や技術・薬剤・機器などの飛躍的な発展のおかげで、全身麻酔の安全性は確実に向上しております。
なお、全身麻酔の際に必須なのが気道評価(気道確保という処置が可能か否か、及びその難易度を評価すること)です。全身麻酔をかけると患者さん自身で呼吸をしにくくなるので、気道確保を必ず行います。口を開けにくい、首を動かしにくい、顎が小さい、歯がぐらぐらしている、高度肥満などは気道確保を難しくする要因として挙げられます。よって、全身麻酔をかけてから慌てないよう、術前の気道評価は重要事項であると認識しています。患者さんには歯の治療など事前に出来ることはしていただきつつ、私たちも患者さんの状況に応じて十分対策を立てる必要があります。
術中麻酔管理
術前診察をもとに立てた麻酔計画に則り全身管理をします。手術及び麻酔中、麻酔科医は患者さんから離れることなく常に監視を行い、何か問題点が起きたら即座に評価し対処できるように備えております。
頻度は少ないですが、手術中に予期しない大量出血や呼吸状態の不安定化、心停止(心臓の動きが止まること)など患者さんが生命の危機に晒されることがあります。そのような場合でも、麻酔科医は冷静かつ的確に判断して対応すると共に、他のスタッフに指示を出します。このように、手術室における司令塔の役割を果たすことも私たち麻酔科医の仕事であり義務である、と認識しています。
術後診察・管理
手術が終了し、術後の診察をベッドサイドにて行います。意識・呼吸・循環といった全身状態に留まらず、痛みの程度や吐き気の有無など多方面から評価します。当科で施行可能な処置を加えることもしばしばあります。