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がん薬物療法

細胞傷害性抗がん薬

細胞傷害性抗がん薬とは、がん細胞の増殖を妨げたり、がん細胞を破壊したりする作用を持った薬剤のことです。現在多くのがんでの標準治療として用いられています。作用する部位の違いにより様々な薬剤が開発されており、現在数十種類以上が使用されています。静脈注射や点滴、内服することにより全身に作用します。薬剤は単独あるいは数種類を組み合わせて用いることがあります。
 
使用目的としては

  1. 抗がん薬のみで治癒を目指す:
    白血病、悪性リンパ腫、胚細胞腫瘍など
  2. 手術・放射線治療と組み合わせて治癒を目指す:
    胃がん、大腸がん、食道がん、頭頸部がんなど
  3. 症状を和らげる、延命を目指す:
    多くの転移したがん

の3つがあります。ご自身が今どのような目的で治療を受けられているのかを理解することはとても大切です。
 
これまで開発されてきた薬剤の多くは化合物や植物などの毒性物質のうち偶然がん細胞を傷害する薬剤を選び、抗がん薬として開発されました。そのためがん細胞を傷害しますが同時に正常細胞も傷害するため、副作用が避けられないものとなっています。主な副作用としては吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、倦怠感、脱毛、手足のしびれなどといった自覚症状があるもの、及び骨髄抑制、肝障害、腎障害などといった検査でわかる異常があります。近年副作用に対する支持療法が進歩しており、以前よりも負担なく治療が受けられるようになってきています。
 

分子標的治療薬

近年の科学の進歩により、がん細胞の増殖、進展に関わる分子(タンパク質など)が明らかになってきました。これらの分子を標的に開発された薬剤が分子標的治療薬です。がん細胞に直接作用し増殖を抑える薬剤のほか、がんに栄養を送る血管が新たにできるのを抑える働きを持つ薬剤もあります。

正常細胞への影響は少ないと言われていますが、それぞれの薬剤ごとに特徴的な副作用が知られており、これらの副作用をうまく抑えながら治療を行うことが重要です。現在ほぼすべてのがんにおいて開発が進められており、多くの薬剤が用いられています。

 

ホルモン療法薬

一部のがんではもともと体内で分泌されているホルモンの作用によりがんが増殖します。このようながんでは特定のホルモンを分泌している部分を手術で取り除いたり、ホルモンの働きを抑える薬剤を投与したりすることにより、がんの増殖を抑えることができます。主に乳がん、子宮体がん、前立腺がんの治療に用いられます。

 

免疫療法薬

近年注目されている治療法が免疫療法です。ヒトの体では毎日がん細胞が発生していますが、通常は免疫機能により発生したがん細胞は排除されています。しかし、一旦がんが発症してしまうと、がん細胞が免疫にブレーキをかけた状態となり、がん細胞を排除することができなくなります。免疫療法とは、免疫本来の力を回復させることでがんを治療する方法です。これまでさまざまな方法が研究されてきましたが、なかなか有効性を証明することができませんでした。近年がん細胞が免疫にかけたブレーキを解除する働きを持つ「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬剤がいくつかのがんで効果があることが明らかになっています。免疫チェックポイント阻害薬の副作用はこれまでの細胞傷害性抗がん薬と比べて少ないものの、全身にさまざまな副作用(肺障害、肝障害、大腸炎、皮膚障害、内分泌機能異常など)が起こることが報告されています。副作用は治療中のみならず治療終了後にも出現する可能性があり、注意が必要です。

 

支持療法

がん自体に対する加療以外に生活の質を保つための治療もとても大事なものです。支持療法は疾病や治療にともなう有害事象に対する治療です。痛み、倦怠感、食欲低下、吐き気、下痢・便秘、手足のしびれ、脱毛、血球減少などに対する生活指導、薬剤療法が中心となります。必要に応じて造血薬の投与や輸血、感染時の抗生剤投与も行っていきます。少しでも安楽にがん治療を続けていただくために多職種で対応しています。

 

免疫抑制療法

再生不良性貧血や自己免疫性溶血性貧血、免疫性血小板減少性紫斑病などは免疫の異常によって発症する血液疾患です。これらの疾患の治療には免疫抑制薬(ステロイド、シクロスポリン、特殊な免疫グロブリンなど)を使用します。