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生化学的検査

肝機能、腎機能、脂質など、さまざまな項目について血液を用いて調べます。
ASTやLDなど、いろいろな臓器に存在する項目もあるので、他の項目とあわせて、どこの臓器の具合が悪いかを判断します。

血糖 糖尿病あるいは、高血糖ないし低血糖を呈する疾患、病態を疑った場合の診断や経過観察に用いられます。
HbA1c 過去1ヶ月くらいの平均血糖値を反映します。
血清総蛋白 健康、栄養状態の総合指標として利用されます。肝機能や腎機能の障害で、代謝に異常があると変動します。
アルブミン 蛋白と同様、健康、栄養状態の総合指標として利用されます。
A/G比 アルブミンとグロブリンの比率から生体異常の有無を知ることができます。
総ビリルビン 肝臓障害などがある時に高値を示します。 体質性黄疸などの診断のきっかけになります。
直接ビリルビン 同上、T-Bilと同時に測定することでビリルビン代謝過程、関係臓器、病態、経過などを簡便に診断できます。
AST:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ 肝臓の異常に敏感に反応する酵素で、心筋梗塞などでも上昇します。
ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ 肝臓の異常に敏感に反応する酵素で、ASTとの比による病体評価に用いられます。
アルカリフォスファターゼ 骨の新生状態や肝、胆道系疾患で異常値となります。小児は高値です。
乳酸脱水素酵素 肝臓病、心臓病、血液の病気で高値になります。小児は高値です。
コリンエステラーゼ 主に全身状態の把握、肝機能検査として用いられます。
γグルタルトランスペプチダーゼ 肝機能障害を疑う時、胆汁うっ滞の指標となります。
クレアチンキナーゼ 骨格筋や心筋あるいは脳などの損傷の程度を推測することができます。
アミラーゼ 膵からの酵素逸脱現象の増減から、膵疾患の存在を推定する方法の一つです。
尿素窒素 腎臓機能のスクリーニング検査として用いられます。腎臓の排泄機能が正常かどうか見ることができます。
尿酸 痛風の原因となる物質です。腎機能検査、成人病検査などの診断に用いられます。
クレアチニン BUNとあわせて測定し、腎臓の排泄機能が正常かどうか見ることができます。
ナトリウム 血中濃度のバランス(浸透圧)のくずれを調べて、体内の水代謝異常を診断します。
カリウム 同上。濃度変化は特に神経、筋肉の機能に重要な影響を与えます。
クロール 同上。Naと並行して変化します。その関係が見られないときには、酸・塩基平衝の異常を示唆します。
カルシウム 各種代謝性骨疾患や内分泌疾患などで値が変動します。
無機リン 各種代謝性骨疾患や各種ホルモンの分泌異常の指標となります。
マグネシウム 吸収不全、糖尿病性ケトアシドーシス、腎不全、内分泌疾患などで異常値を示します。
総コレステロール 動脈硬化や心臓病などの診断や経過観察に有用です。
トリグリセライド 動脈硬化の危険因子として重要です。肥満度に比例して高くなります。
HDLコレステロール 善玉コレステロールといわれ、低値の場合は冠状動脈硬化症疾患の危険因子として認識されています。
LDLコレステロール 最も強力な動脈硬化惹起性の蛋白です。高低脂血症の診断治療指標及び経過観察に用いられます。
血清鉄 貧血の鑑別診断、肝障害診断に有用です。
不飽和鉄結合能 同上。血清鉄とあわせて測定する事により、貧血をはじめとする各種の病態の鑑別診断に役立ちます。
フェリチン 組織内の鉄貯蔵の役割を担っており、鉄欠乏状態では低値を示し、鉄過剰状態では高値を示します。
アンモニア 肝性昏睡の指標や、血漿交換や洗腸などの治療効果の指標としても有用です。
グリコアルブミン 過去1~3週間の平均血糖値を反映します。

血液学的検査

赤血球、白血球、血小板の数や、赤血球中に含まれるヘモグロビンの濃度などを検査します。貧血や出血の状態、炎症の状態などが分かります。
また、血球成分を顕微鏡で観察することによって、白血球の構成比率や、赤血球・白血球・血小板の形態異常がないかを調べます。

白血球数 生体防御にかかわっており、細菌感染などで上昇するがウイルス感染では低下することもあります。また、血液の製造元である骨髄に異常が起こると、急激に増減することもあります。
赤血球数 血液中に最も多く存在する血球で、全身の細胞へ酸素を送り届け、代わりに二酸化炭素を受け取って回収する働きをしています。数が減ると貧血がおこります。
ヘモグロビン ヘモグロビンは赤血球に含まれており、酸素の運搬を行っています。数値の低下で貧血がわかります。
ヘマトクリット ヘマトクリット値は一定の血液量に対する赤血球の割合を%で表したものです。貧血の指標となります。
MCV 平均赤血球容積。貧血の場合その種類の判定の目安となります。
MCH 平均赤血球ヘモグロビン量。貧血の場合その種類の判定の目安となります。
MCHC 平均赤血球ヘモグロビン濃度。貧血の場合その種類の判定の目安となります。
血小板数 止血に重要な役割を果たしており、数が減少すると出血をおこしやすくなり、増えると血管をふさぐ血栓ができやすくなります。
網赤血球 やや未熟な赤血球で、新生児や溶血性貧血などで高値、再生不良性貧血などで低値となることがあります。血液疾患の診断や治療効果を見る検査です。
血液像の検査 白血球、赤血球、血小板の形態観察を行い、造血器や生体内の情報を得ることができます。
骨髄像の検査 血液検査において、血液疾患が疑われる場合に、血液の製造元である骨髄液を採取し、各血球の成熟段階と割合を見ていきます。

凝固系検査

血液中には、出血を止める働きをする因子(凝固系)と、止血後に出血を止める際にできた血栓を溶かす因子(線溶系)があります。さまざまな因子がバランスよく存在し、機能しています。

プロトロンビン時間
PT活性
PT INR
血液の凝固機能を見ています。APTTと共に出血傾向のスクリーニング検査です。抗凝固療法の治療管理に用いられます。
活性化部分トロンボプラスチン時間 血液の凝固機能を見ています。PTと共に出血傾向のスクリーニング検査です。
フィブリノーゲン 血栓傾向または出血傾向の有無の目安となります。
D-ダイマー 形成された血栓の程度を反映します

輸血検査

貧血などにより輸血が必要なときのための検査で、血液型の検査も輸血検査のひとつになります。

血液型 血液型にはさまざまな種類がありますが、その中でもよく知られているABO式(A型・B型・O型・AB型)とRh型(Rh+・Rh-)について調べます。どちらも輸血を行う前に必要な検査です。
不規則抗体 赤血球に対する抗体(不規則抗体)があるかないかを調べます。
不規則抗体があると、輸血をする際に副作用を起こす可能性が出てきます。事前に調べておくことにより安全に輸血を行うことができます。
過去に輸血をされた方や妊娠されたことがある方は、不規則抗体を持っている可能性があります。
交差適合試験 クロスマッチとも言います。貧血時の輸血を行うときに、患者さんの血液と血液バック(供血者)の血液とが適合しているかを検査します。

感染症検査

病原体の感染の有無を調べる検査です。
輸血前や手術前、妊娠検診では必ずこの感染症検査を行います。

HBs抗原 B型肝炎ウイルスの感染状態
HBs抗体 既往のB型肝炎ウイルス感染、防御抗体
HCV抗体 C型肝炎ウイルスの感染の有無
TP RPR 梅毒感染、既往の梅毒感染
HIV抗体 AIDSの感染の有無

腫瘍マーカー・甲状腺マーカーなど

当院では以下のような各種マーカー検査を行っています。
これらのマーカーは、他の検査と組み合わせて判断されます。

AFP 肝ガン など
CEA 膵臓ガン、大腸ガン、肺ガン、胃ガン など
CA19-9 膵臓ガン、胆のうガン など
PSA 前立腺ガン、前立腺肥大症 など
CA125 卵巣ガン、子宮体癌 など
BNP 急性心筋梗塞、うっ血性心不全 など
TSH・FT4 甲状腺機能評価 など

尿検査

腎臓には、ろ過・吸収という働きがあり、体内の老廃物が尿となって排出されます。
よって、尿を検査すると腎臓・尿路系の病気がわかるだけでなく、項目によってはそれ以外の臓器による影響を調べることができます。
尿検査では、蛋白、潜血、糖などがどのくらい尿中に含まれているかを調べます。これらは健常人では、尿中にほとんど含まれていません。尿中に蛋白や潜血など、異常がみられた場合は、直接顕微鏡で尿中の成分を見る尿沈渣(にょうちんさ)を行います。
尿検査を行う際は、出始めの尿と最後の尿を捨て、真ん中の中間尿をとるようにお願いします。

尿の色調 普通は黄色ですが、水分摂取量が少ないときや汗をかくと濃い色に、多量の水分をとったときには無色に近づきます。尿に含まれるものによってはにごって見えます。
飲んでいる薬によっては、色がついた尿が出てくることがあります。
尿のpH 尿がアルカリ性か酸性のどちらに傾いているかを調べます。普通は弱酸性の6.0ぐらいですが、健康な方でも、動物性食品の過剰摂取では酸性に、植物性食品の過剰摂取ではアルカリ性に傾きます。
尿蛋白 陽性になると主に腎臓の異常を考えます。時に、運動後など健康な方にも出ることがあります。
尿潜血 尿の中に赤血球が混じっている状態です。陽性になると主に腎臓や尿路系(尿管・膀胱など)の異常を考えます。尿中に含まれる赤血球の量がかなり多くなると、目で見ても血尿と分かります。
白血球 陽性になると、腎臓から尿道の間のいずれかの炎症を考えます。
亜硝酸塩 尿中にいる細菌によって産出されるので、陽性になると細菌がいると考えます。
尿糖 尿中に含まれるブドウ糖です。一般的に血糖が160~180mg/dlを超えると尿中に出てきますが、この値も個人差があります。尿糖が出ていても必ず糖尿病にかかっているとはいえず、血液検査で確認する必要があります。
尿ケトン体 体内では、ルコース(糖)を分解してエネルギーに変えますが、それができないときは蛋白・脂肪を分解するようになります。肝臓で脂肪を分解したときにできるものが、ケトン体で過剰に産生されると尿中に排出されます。糖尿病のコントロールがしっかりできているかを判定する検査項目のひとつです。
ウロビリノーゲン 健康な人でも尿中にわずかに含まれますので、基準値は、『(±)』となりますが、他の項目と基準値が異なるので、『Normal』と報告しています。尿中で増加すると、主に肝機能の異常や溶血性貧血を考えます。逆に、まったく出ない場合は胆道閉塞を考えます。健常人でもお昼すぎに増加する傾向があります。
ビリルビン 陽性になると主に黄疸を考えます。
尿比重 水の重量を1.000として、尿の重量の比を求めます。一般的に、尿量が増えると比重は低くなり、尿量が減ると比重が高くなります。
尿沈渣 尿を遠心し沈んだ成分を顕微鏡で観察します。腎臓や尿路系に異常があると、赤血球や白血球をはじめ腎臓・尿路系の細胞や細菌、結晶などが見えることがあります。健常人でも細胞や結晶が見られることもありますが、病的なものとは異なります。

細菌検査

炎症が起こっている部位から、痰や便、尿、鼻汁、関節液、胸水・腹水といった体液などの検体を採取し、そこにある菌を調べその菌にどんな薬が効くのかを調べていきます。
まず、採取した検体を直接顕微鏡で観察し、細菌の観察を行います(塗抹鏡検)。
次に検体の種類や予測される細菌によって、適切な培地や培地条件を選び、培養します。培養で育った細菌の塊(コロニー)をもとに、細菌の名前を調べます(同定検査)。その後、その細菌に効く薬と効かない薬を調べていきます(感受性検査)。
細菌検査は、菌を培養する期間が必要なため、最終的な結果には、通常約3~4日かかります。特に、結核菌の場合は、発育速度が遅いため、最終報告は約1~2ヶ月かかります。また、必要に応じて、中間報告を行っています。
細菌検査でよく用いられる痰の検査ですが、病気の原因となる細菌を検出するために、唾液成分の少ない痰が望まれます。
これらの細菌塗抹培養検査は甲南医療センターで検査をしています。

各種細菌ウイルス迅速検査

炎症が起こっている部位から検体を採取し、専用キットを用いて検査を行います。
これらの検査は確定された結果ではありません。
陰性(-)の結果が出ても、細菌感染には潜伏期というものがあり、実は潜んでいることもあります(偽陰性)。また逆に陽性(+)の結果が出ても、専用キットにはそれ以外の細菌に反応することもあります(偽陽性)。
あくまでも、どのような治療が必要なのかを症状や他の検査と総合的に判断し迅速に対応するための検査です。
これらの検査は約20分程度で結果が出ます。

検出微生物 症状 使用検体 よく検出される季節
ロタウイルス 下痢(白色水様下痢) 糞便
A群溶連菌 喉の痛み 咽頭ぬぐい液
アデノウイルス 発熱、喉の痛み 咽頭ぬぐい液
眼やに
大腸菌 O-157 下痢、食中毒症状 糞便
インフルエンザウイルス 発熱、体の痛み 鼻腔ぬぐい液 秋~冬
アデノウイルス 下痢 糞便
RSウイルス 乳幼児の風邪、咳、鼻汁 鼻腔ぬぐい液
マイコプラズマニューモニエ 肺炎、発熱 咽頭ぬぐい液 年中

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の検査

普通の細菌は胃液により死滅しますが、ピロリ菌は胃液に含まれる尿素を分解しアンモニアを生成することで、自分の周りをアルカリ性にして生息しています。
このように胃内PHの変化によって胃粘膜に炎症が起きて潰瘍になると言われています。
尿素呼気試験検査は、まず13C標識尿素というお薬を服用して、ピロリ菌に尿素の分解をさせます。お薬の吸収後、呼気から出される標識13CO2を測定し判定する検査です。
検査時間は40分くらいで、簡便かつ負担の少ない検査です。
ピロリ菌の検査は他に、胃内視鏡検査(迅速ウレアーゼ試験、胃粘膜生検)や血液抗体試験があります。

病理検査 甲南医療センターで検査を実施しています

病理検査

手術で採取した臓器・骨や内視鏡(胃カメラ・大腸ファイバー・気管支ファイバー)、肝・腎生検で採取した組織を調べる検査です。
組織を固め(固定)、薄くスライスし(薄切)、染色して、標本を作製し、顕微鏡で細胞構築を観察します。病理医が病理学的診断を行います。

  • 組織標本
  • 細胞診標本

細胞診検査

喀痰や尿、胸水・腹水などが検体となります。また、乳腺や甲状腺など超音波下に直接針を刺して細胞を採取する場合もあります。
おもにがん細胞を見つけるための検査ですが、その他、多くのことがわかります。スライドガラスに集めた細胞を薄く広げ(塗抹)、染色し、顕微鏡で細胞の観察を行います。
細胞検査士の資格をもった技師と細胞診指導医が診断を行います。

術中迅速検査

手術中に病理医が短い時間で病理・細胞診断を行います。良・悪性はもとより、臓器の切除範囲および術式の変更などの決定に極めて重要な検査です。クリオスタットという専用の機械を使用します。

臨床検査を終了した残余検体の業務、教育、研究のための使用について

六甲アイランド甲南病院中央検査部では、より質の高い臨床検査の提供を目指して、検査の精度管理(検査精度を一定に保つため)の向上、医療従事者教育、新しい検査の導入などの取り組みを行っています。これらの活動では、臨床検査が終了した検体(残余検体)を使用して、検査方法などを評価しています。

残余検体(血液・尿・体腔液など)の使用については、「臨床検査を終了した検体の業務、教育、研究のための使用について―日本臨床検査医学会の見解―」(平成22年3月)を遵守いたします。

患者さんにおかれましては、これらの残余検体の再利用の趣旨をご理解いただきましてご協力を賜りますようお願い申し上げます。なお、研究目的の使用は、院内の適切な審査を経て行います。残余検体の再利用時には、患者さんの個人情報や検査データについての守秘義務を順守し、患者さんが不利益を被ることはありません。また費用の生じることもありません。
患者さんのなかで「同意できない」あるいは「残余検体を使わないでほしい」というご意見をお持ちの方は、大変お手数ですが、中央検査部までお申し出ください。

ご協力いただいた患者さんの個人情報は匿名化し、外部に漏れないよう厳重に管理いたします。研究結果は学会や論文などで発表させていただくことがありますが、その際も個人のプライバシーが公表されることは一切ありません。
患者さんのご理解とご協力をお願いいたします。

院長
中央検査部

役職・スタッフ名 専門分野
学位・経歴
得意とする分野 学会専門医・認定医