肺癌は1年間で10万人当たり88.7人が診断されており、部位別では男性第2位、女性第4位と増加してきています。癌による死亡率でも、肺癌は男性第1位、女性第2位となかなか治療が難しい病気です。ただ、この15年ほどで分子標的薬や免疫治療が飛躍的に進歩し、治療成績もよくなってきています。肺癌の遺伝子検査と分子標的薬治療について紹介します。
肺癌の進行状況を表す病期は、癌が局所に留まるⅠ・Ⅱ期と、広範囲・多臓器に広がるⅢ・Ⅳ期に分けられます。Ⅰ・Ⅱ期とⅢ期の一部は手術や放射線治療を中心に、ある程度完治が期待できますが、Ⅲ期の大部分とⅣ期になると手術や放射線では完治が期待できず、抗がん剤中心に症状の緩和と長生きを目指すことが治療の目標になります。
それでは、肺癌の遺伝子検査について紹介します。肺癌細胞が増殖する原因となっている特定の遺伝子異常が数多く見つかっており、さまざまな薬剤が開発されつつあります。まず、肺癌が疑われる組織から、気管支鏡やCT下生検で組織の採取を行い、癌の診断を行います。癌の診断がつけば、検査会社で次世代シークエンサーという機械を用いて、治療可能な遺伝子変異がないか確認を行います。
治療可能な遺伝子異常が見つかった場合、特定の分子標的薬で治療を行うことで、これまでの抗がん剤治療よりも劇的に治療効果があげられる可能性が出てきます。肺癌と診断されると、医師も患者も早く治療をしたくなり、焦る気持ちはよくわかりますが、しっかり診断して、適切な治療法を選択することがとても重要になっています。分子標的薬は内服薬で治療できることが多く、一般的には従来の抗がん剤治療よりも楽に受けられることが多いですが、間質性肺炎や皮膚障害、下痢など、特有の副作用が見られますので、副作用をケアしながら慎重に治療をしていくことが大切です。