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耳鼻咽喉科部長の後藤が、兵庫県医師会が発行している広報誌Pulse Vol.39のパルスレポートを担当しました。以下抜粋です。

 

性別・年代を問わず突然に起きる感音難聴

耳が聞こえにくくなる難聴には、外耳や中耳に原因がある「伝音難聴」、内耳やそれより奥の神経に原因のある「感音難聴」、2つが合併した「混合性難聴」があります。突発性難聴は「突然に起きる感音難聴で原因不明のもの」と定義されています。片方の耳が急に聞こえなくなるのが特徴で、両耳同時に発症するケースは非常にまれです。また何度も繰り返し発症する人もほとんどいません。循環障害やウイルスの影響など様々な説がありますが、原因はわかっていません。当院でもひと月に数人は初診の患者さんが訪れる疾患で、よくある病気といえます。働き盛りの世代に多く、好発年齢は50代から60代。若い人も少なくありません。

 

症状や程度はさまざま 耳鳴りやめまいを伴うことも

症状は難聴のほかに耳鳴りやめまい、嘔気を伴うことがあります。診断はメニエール病や機能性難聴、外リンパろうなど急に感音難聴をきたす疾患を除外したうえで行います。そこから治療に進むわけですが、突発性難聴でめまいを伴う高度な難聴が起きた場合、非常に治りにくいのが現状です。

 

治療の中心はステロイド薬 できるだけ早く開始を

治療は一般的にステロイド薬を使用し、内服や点滴で投与します。ステロイド以外の治療薬では血管拡張薬や代謝改善薬があります。ステロイド薬は糖尿病や緑内障、胃潰瘍などがある場合は悪化することもありますので、主治医と治療中の疾患について十分話し合って決める必要があります。特に糖尿病はステロイド薬によって高血糖となる可能性がありますので、当院では入院の上糖尿病内科医の指示のもと、血糖値を見ながら慎重に投与しています。
ほかに体内に多量の酸素を入れる「高気圧酸素療法」があり、当院では土日曜や祝日を除く原則週5回、上限30回まで行っています。交感神経をブロックして内耳の血流を増加させる「星状神経節ブロック」は近隣のペインクリニックに依頼しています。どの治療を行うにしても治療開始が早いほど改善する確率が上がります。突発性難聴は発症から7日以内に治療を開始することが重要で、できれば3日以内に治療を始めていただきたい。聴力は1か月から2か月で固定してしまいます。スピードが勝負と知ってほしいと思います。耳鳴りがする、ちょっと聞こえにくいという異変を感じたらすぐに病院を受診してください。

 

誘因になるストレスや過労、睡眠不足を避けて

原因不明ではありますが、過度のストレスや睡眠不足、不規則な生活習慣など、いくつかの誘因がわかっています。糖尿病が関係しているというデータもあります。突発性難聴の確実な予防法はありませんが、ストレス過労を避け、規則正しい生活を心がけることが重要です。性別を問わず幅広い年代の人に起きる疾患です。人ごとと思わず、十分に気をつけてほしいと思います。