呼吸器外科で扱う代表的な疾患に気胸があります。気胸とは何らかの原因で胸腔内、肺の外側に空気が存在する状態を指す言葉であり、原因により自然気胸、外傷性気胸などに分類されます。軽症では無治療経過観察が可能なこともありますが、肺の約1/3以上が空気に押しつぶされてしまう様な中等症以上の気胸の場合、閉鎖空間である胸腔内に存在する空気を体外に排出し、肺の膨張を改善するために胸腔ドレナージ処置、手術が必要となるケースがあります。特発性自然気胸は10代~20代の若年男性に多く見られ、その原因は成長期に肺尖部と呼ばれる肺の頭側先端付近に発生する肺嚢胞という構造物が原因となっています。
気胸の手術ではそれら肺嚢胞の切除を基本として、縫合やパッチ閉鎖などを併せ、肺からの空気漏れを止めます。再発を繰り返す場合や、ドレナージのみでは空気漏れが収まらない場合は若年であっても手術の必要がある疾患です。手術をするとどうしても術後に痛みが生じ、またお体に傷が残ります。疼痛緩和の観点、そして美容的観点からも、創部はできるだけ少なく、小さく、が現在の呼吸器外科領域の手術の基本となっています。当院呼吸器外科でも、個々のケースにより難しい場合もありますが、小さな創で、少ない創での手術に注力しております。