整形外科の「骨粗鬆症外来」では、骨折を受傷され、「骨粗鬆症」と診断された患者さんに対する2次骨折予防の治療を主として行っています。「骨粗鬆症」とは、骨量と骨質の劣化により、脆弱性骨折を起こしやすくなる病態であり、生活習慣病との関連性も高いのですが、骨折を発症しない限り、無症状ではあります。
超高齢化社会の日本において、高齢者の脊椎椎体骨折や大腿骨骨折の患者数は年々増加しています。
多くが「骨粗鬆症」を基盤として、転倒などの軽微な外力で生じるもので、骨折患者数は2040年前後まで増加していく見込みです。骨折というと時間が経てば治ると考える人が多いですが、高齢者が背骨や大腿骨などを骨折すると、歩行能力が低下したり、寝たきりになったり、時には命に関わることもあります。大腿骨骨折の約10%の患者さんが、受傷して1年以内に亡くなっていると報告されています。
骨量が増加するのは、20歳ぐらいまでで、骨量のピークを迎えた後は、維持しながら、年齢と共に推移していきます。男性は右肩下がりに徐々に、女性は閉経後、女性ホルモンの低下とともに50歳ごろから急激に骨量が減少していきます。「骨粗鬆症」になるのは圧倒的に女性が多く、全体の約8割を占めています。ほとんどの方が、ある日突然骨折を受傷し、「骨粗鬆症」に気付くことが多いです。
脆弱性骨折の既往がある患者さんは、骨密度の有意な低下がなくても、「骨粗鬆症」と診断されます。
脆弱性骨折の既往がない患者さんは、骨密度が、20~40歳の骨密度の平均値であるYoung Adult Mean(YAM)と比較して70%未満、または背骨のレントゲンで変化がある場合は「骨粗鬆症」と診断されます。当院では腰椎、大腿骨、大腿骨頚部の骨密度を計測していますが、一項目でもYAM70%未満に相当すれば、脆弱性骨折の既往がなくても、「骨粗鬆症」と診断し、治療開始をお勧めしています。YAM60%未満に相当すれば、「重症骨粗鬆症」であり、骨折リスクが極めて高い状態であるため、骨形成促進薬である注射薬を主とした治療が必須です。気になる患者さんは、是非、骨密度検査を受けていただくことをお勧めします。
「骨粗鬆症」に伴う骨折は1つ発生すると、その後に次々とあたかもドミノ倒しのように続発するのが特徴です。「骨粗鬆症」の治療目的は、脆弱性骨折の予防であります。患者さんの「骨粗鬆症」の重症度や他の薬剤との兼ね合わせなどにより、患者さんに合った内服薬や注射薬を処方させていただき、治療しています。早期の治療介入により、骨折リスクを下げることができ、生活の質を維持したまま、お元気に自分らしく暮らしていけるように支援したいと私たちは考えています。よろしくお願い致します。