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突発性難聴に対する高気圧酸素療法について

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高気圧酸素療法をご存知でしょうか。甲南医療センターには2019年10月より高気圧酸素療法を行える設備が整っています。耳鼻咽喉科領域では突発性難聴が保険診療での治療の対象です。高い圧力をかけた特殊なカプセル内で過ごすことで、内耳の血流を改善し、聴力改善をはかります。

突発性難聴はある日突然、耳の聞こえが悪くなり、耳鳴りやめまいなどを伴う原因不明の疾患です。標準的な治療は、発症早期にステロイド薬を短期的に使用し、その後はビタミン剤などを内服します。ステロイド薬の使用にあたっては、基本的に外来通院での点滴や、内服を行います。糖尿病や重篤な高血圧症がある場合は、内科の治療も受けていただきながら入院で点滴治療します。高気圧酸素療法はこのステロイド薬による治療と同様に、発症からできるだけ早期に開始することで、難聴の改善率が高くなります。治療は平日(できれば連日)に通院し、治療室で約1時間半程度、カプセルに入ります。最大で30回行えますが、状況により30回未満で終了することもあります。外来通院でステロイド薬を使用する場合は、ステロイド治療と高気圧酸素療法を同時に行うことも可能です。また何らかの事情でステロイドを使用できない場合に高気圧酸素療法のみ行うことも可能です。

主な治療対象は突発性難聴の重症の方です。飛行機に乗ったときや、新幹線でトンネル内を移動したときのように体への圧力変化があると、耳が詰まる感覚が生じる経験があると思いますが、似たようなことがこの治療で起こります。圧力を上下させることで、一時的ではありますが副作用が起こり、かえって聞こえにくさが出現する可能性もあるため、比較的軽症の方には不向きです。そのため事前に検査を行い、治療を受けていただけるかどうか判断します。比較的高額な治療ですが、高額療養費制度を利用してご負担を軽減していただく場合が大半です。

非常に稀ですが、小児でも突発性難聴に罹患することがあります。成人同様に高気圧酸素療法を受けることが可能で、当科で行った症例のうち発症3週間程度で治療開始できた方は改善傾向を認めましたが、1か月半程度経過した方は効果がみられませんでした。

年齢を問わず、できるだけ早期の治療開始が望まれます。治療の対象となるかどうか、まずは相談から可能ですので、ご希望の方は当院耳鼻咽喉科に早めの受診をお勧めします。